ガンダムに学ぶビジネス 第30話『小さな防衛線』
2014年7月14日
おはようございます。昨日はフォトリーディング・エグゼクティブ講座三日目の最終日でした。英和辞書のフォトリーディング、洋書へのチャレンジ、シントピック・リーディングの体験などを通してフォトリーディングの価値を存分に味わっていただきました。
全力を尽くしたせいか、昨晩はビール飲んで10時過ぎには寝込んでしまいました。暑くて寝苦しい夜でしたが、今朝も5時半に起きて、コーヒーを豆から挽いて淹れて、新聞をフォトリーディングして、ファースト・ガンダムを視聴しました。
そうそう、ファースト・ガンダムって最初の機動戦士ガンダムのことを言いますが、一般的にはTVシリーズをリニューアルした劇場版機動戦士ガンダムⅠ・Ⅱ・Ⅲのことを指すそうです。TVシリーズには矛盾や混乱、作画の乱れも多く、ガンダムの黒歴史ともされることがあるそうですが、TVシリーズにはそれも含めて劇場版にはない魅力に満ち溢れています。アニメ評論家の氷川竜介氏はTVシリーズのガンダムのことを、手の加わっていない生粋という意味で、ネイティブ・ガンダムと名づけています。
ネイティブガンダム[リマスター版]第0回 「ネイティブ」のもつ迫力と情報量
私も今回毎日1話ずつTVシリーズを見ていて、劇場版を繰り返し見たのでは得られないたくさんの学びを得ることができています。これをリアルタイムで見ていた人は本当に羨ましいです。
さて今日観たネイティブ・ガンダムは第30話『小さな防衛線』。ジャブローへの攻撃に失敗したシャア大佐は、特殊工作部隊を編成し、ゲリラ的な活動で内部に爆弾を仕掛けて損害を与えようとします。ホワイトベースでこれまで避難民として乗っていた3人の子どもたちは育児施設に入れられることを拒んで脱走。迷い込んだガンダム量産機=ジム工場でジオンの工作部隊と遭遇し、設置された爆弾の除去に大活躍します。作戦は失敗し、ガンダムの追撃でアッガイは全機撃破され、シャアの赤ズゴックは片腕を切り落とされながらぎりぎりのところで脱出する、というお話です。
サイドストーリーでありながら、作品全体とつながっているのがこの話の凄いところ。
連邦軍はまだ宇宙艦隊を再建できず、ジオン本国への到達も果たしていません。それに対して連邦軍の本拠地への攻撃の糸口を掴んだことで、ジオン軍としてはここに戦力を集中させ、ジャブロー陥落、司令部の崩壊、戦局の転換を図ることが可能になったはずです。
ところがオデッサでの敗北で鉱物資源を得られなくなり、兵站が崩壊してしまった。その象徴が今回登場した新モビルスーツのアッガイ。ザクのエンジンを2機搭載し、その他もザクのパーツを流用した粗悪品という設定なのです。全機をガンダムに瞬殺されてしまうのは、アムロが凄いだけでなく、カスタム機と流用機の差なのかもしれません。
シャアがその粗悪品で特殊工作というゲリラ戦を展開せざるを得なかったのは、前話でジオンの地上戦力を使い果たしたからです。本来はジャブローへの侵入経路を発見した時点でジオンは宇宙戦力を地上へ降ろし、戦力集中による総攻撃を行う戦略を取るべきでした。
しかしジオン軍はキシリア、ドズルがそれぞれ対立、半目しあい、共同作戦がとれなかった。それはまさに第二次世界大戦で、戦局の悪化にもかかわらず陸軍と海軍がそれぞれの立場の固執し、連携できず、司令部の作戦はチグハグになり、壊滅的な敗戦へと進んだのと同じ構図に見えます。
それでも現場に活躍しろと言われたら、結局シャアほど優秀な士官であっても、このような作戦を取らざるを得ず、戦略のサポートのない中でのシャアの大活躍はいたずらに戦力の消耗を招く結果に終わりました。
私はこれを見ていて、作者の細部へのこだわりをひしひしと感じました。軍人でないアムロたちが軍隊で兵器を扱うこと、子どもたちがなぜ戦艦に乗り続けるのか、ホワイトベースが部隊編成に組み込まれないで単艦行動を続ける理由、それらをていねいに描いているのです。
通常のロボットアニメではこれらのことは「お約束」。当然の前提として話が進みます。それに対して、この話では、アムロたちの任官、クルー一人一人の上下関係の明確化、育児官による子どもたちの乗組手続き、作戦会議におけるホワイトベースの処遇決定、などの論理的説明と、ドラマによる感情的・情緒的な側面とで、しっかりと説得力を発揮しています。
ここまで細かく話を詰めたことは、ガンダムの舞台の世界にリアリティを与えました。それがこの後続く富野監督および他の作者によるガンダム世界(08小隊、0083、Z、ZZ、逆襲のシャア、ユニコーンなど)を生み出し、35年間に渡るガンダム市場を形成してきました。(市場規模は推定ガンダム3000億円、ワンピース1000億円)
戦略と戦術の問題、そして細部にわたる論理構成とそれを支えるドラマにおいて、この話は徹底的にこだわり抜いています。細部に拘ることが目的ではなく、全体の一貫性を保つために細部も見逃さない、ということは仕事の姿勢として学ぶところ大です。
-
<本日の学び>魂は細部に宿る。大きな志、ヴィジョンを持つなら、細部を徹底的にこだわろう。