ガンダムに学ぶビジネス 第31話『ザンジバル、追撃!』
2014年7月15日
おはようございます。本日はいろいろお世話になっている來夢先生プロデビュー20周年記念イベントが日本橋の三越劇場で開催され、そこで私も1時間弱講演します。会場は満席とのことで、たくさんの方々にお会いできるを楽しみにしています。
さて、今朝のネイティブ・ガンダム連続視聴は第31話『ザンジバル、追撃!』。ジャブローで装備を整え、新しい士官の配属を受けたホワイトベースが宇宙へ飛び立ちます。これを追撃するのがシャア大佐のザンジバル。戦い上手のシャアの猛追を新キャラのスレッガーの主砲射撃でかろうじてかわし、新型モビルアーマーのビグロはアムロが、ザクに変わって宇宙での量産機になったリックドムはセイラが、それぞれ撃破します。
この話はなんといっても作画の密度が濃い。
南米を飛び立つときに遭遇するフラミンゴの群れが、なんと一羽一羽はばたいている。これを描くのにどれほど手間がかかったことでしょう。
ザンジバルの大気圏離脱は、アポロが離陸するジェットの噴煙のような描写で、とてつもない重量感。
そしてビグロに引っ張り回されるアムロが超加速で失神し、その放心状態の表情と口からこぼれるヨダレがリアルです。
実はガンダムではアニメーションディレクターの安彦良和さんが病気で途中離脱。この話が作画監督に入った最後になります。今回の作画で力尽きてしまったのか、あるいは倒れることを予感してここで全力をだしたのか、想像するしかありません。それにしても作画的にも、そして演出的にもネイティブ・ガンダムの頂点にある話の一つであるのは確かです。
安彦良和さんの東京新聞でのインタビューで富野監督について次のように語っています。
「ガンダムってすごくよくできていたんだ。ピースが一個一個はまるんだよってことを本当に実感した。そういってはなんだけど、監督の富野さんの一世一代の傑作だった。ガンダム全体をセッティングしたのは彼ですからね。(略)そのときの彼は巨匠でもエリートでもなくて、便利屋さんだったんですよね。そのへんが同じ虫プロ出身者でも出崎統とか松井ギサブローと大いに違うところ。彼らは当時でも偉い演出家だった。富野さんは全然偉くなくて・・・(コンテ描き、仕事が速くて重宝だった)・・・気の置けない相手で、回りも「面白いじゃない」「これいいね」「じゃあいっそこうしたら」って言える訳です。それは僕も言ったし、設定をこしらえた奴なんかもああしろよ、こうしろよ、って言った。それを受け入れて、彼のベストコンディションが物語を変化させていく・・・」
そのピースが一個一個はまるということの奇跡を私たちはガンダムで見ることができるのです。富野監督は作家(創業者、クリエイター)ではなく、便利屋(マネージャー)でした。彼のマネジメントは、スタッフの力を引き出し、さらには過労で倒れるほど、限界を超えさせてしまった。
いや、ブラック企業とは違います。ブラックとは長時間労働を本人の意志とは関係なしに違法に強いるもの。それに対して富野マネージャーはみんなの本気を引き出していった。過労で倒れるくらい本気で仕事できたら、それは偉大なことです。
どうやったらそんなに本気になるのか。
”位置づけと役割を持たなければ 見捨てられし者、根なし草である。”(『産業人の未来』P.F.ドラッカー)
すごい作家たちは自分の位置を強く主張し、役割(才能)を誇示します。ガンダムで富野監督がやったのは、スタッフに位置づけと役割を与えたことでした。周りに意見を求め、またそれを言える環境を作り、それぞれの仕事を奇跡的にまとめあげて結果に結びつけていく。それがスタッフを本気にさせたのです。
この話以降、アニメーションディレクターを欠いたガンダムは作画的にギリギリまで追い詰められます。しかしその中でも興奮と感動は加速し、奇跡的な大団円を迎えることとなります。それはガンダムが「誰か」の作品でなく、スタッフを本気にした結果の作品だからでしょう。
<本日の学び>
ビジネスは本気でなければ通用しない。一緒に働く人たちを本気にさせよう。そして自分を本気にさせよう。