イデオンに学ぶコミュニケーション 第1話『復活のイデオン』
2014年7月30日
おはようございます。今日はマインドマップ・フル活用講座2日目です。このところアニメを観て毎日フルマインドマップを描き、それからブログを書いています。
面白いことにブログはマインドマップに描いた内容とはかなり違ってきます。マインドマップではとりあえず思いつくことを書き出すのですが、その時点ではあまり新しいひらめきや切り口は出てきません。
ところがその後にキーボードを叩いていると、次々に思考が展開し、自分でも予想できなかったような文章になってきます。これは最初描くマインドマップが思考プロセスの見える化となっていて、思考のスタートラインになっているからです。
頭のなかで考えただけは暗算。マインドマップにすれば筆算。途中までの思考が書いてあるから、それを見るとさらにその先を考えることができてしまう。そのような効果は、色や絵をふんだんに使ったフルマインドマップでより顕著です。
マインドマップで思考をまとめるのではなく、マインドマップで現時点の思考を見える化し、それをベースに先を考える、という使い方は今まで意識してきませんでした。これに気づくことができたのも、毎朝アニメを1話ずつ観てマインドマップを描いてきたおかげです。
さて、今朝観たアニメは伝説巨神イデオン第1話『復活のイデオン』。
- ここは地球の移民星の一つ、ソロ星。
- 科学庁が行っている鉱物発掘現場に未登録の大型車両があるというので、軍が戦車を連れて調査に入る。
- このソロ星にバッフクランという地球とは違う星の異星人が「イデ」(この時点ではなんだかわからない)の調査にやってきた。そこで人類を発見。へたに接触すると母星を侵略される可能性があるので接触を避けなければならないという原則がある。
- ところが隊に同行した高貴な女性、カララ様が独走して星に降り立つ。ギジェ隊長は航空部隊を派遣してカララの後を追わせる。
- 発掘現場のあたり、戦車が出てきたところで航空部隊はカララを見失う。
- 地球人を発見した航空部隊の隊員は、カララに万一のことがあっては死刑になると、戦車に攻撃をかける。戦車はビーム砲で反撃。強力な戦力であることに驚いた航空部隊は、自分たちの存在を知られた以上、母星を侵略されるかもしれない。全滅させるしかないと戦闘を拡大。
- 地球人、バッフクラン、双方とも次々に人が死ぬ。
- その時、たまたま現場に居合わせた子どもたちが逃げこんだ第六文明人の遺跡に「イデオン」のサインが浮かび、遺跡は動き出し、変形合体し、巨大なロボットに変わる。
- 巨大なロボットはバッフクランの航空部隊を殲滅。地球人、バッフクラン、両方ともその事態に驚愕する。
これほどの情報量が20分強の番組に入っているのですが、ほとんど説明なしで展開するので初回を見た人はまるでついていけなかったでしょうね。全話を見ている私だからこんなことが書けるのです。
イデオンは初回から徹底的に観ている人に違和感を提供します。ファーストシーンで出てくるコスモ少年が、真っ赤なカーリーヘッド。こんな人どこにいるんだよという感じ。
カメレオンのような動物、猿のような動物が出てくるけど、なんだかわからない生き物。どうやら2つの勢力があるみたいだけど、どちらも人間の顔をしている。
キャラクターの顔は、全員が骨ばっていて、感情移入を拒むような硬質のデザインとなっている。
話は宇宙人とのファーストコンタクトなのですが、そもそも地球人にも感情移入できず、地球人とほとんど変わらない宇宙人。なので、ファーストコンタクトであることすら理解不能な回です。
この「相互理解」がイデオン全体に流れるテーマです。
理解レベルには4段階あります。
- 認識 … そのようなものがあると知った段階
- 馴染み … 前にも見たことがあると識別できる段階
- 知識 … それが何なのかを知っている段階
- 熟練 … 自分にとっての価値が判断できる段階
今回は第1段階の認識。ところが両方の人々はその見たものをすぐに判断し、お互いに攻撃し合います。相手の姿を見て「たいした異星人たちがいるわけもないでしょう」と軽視して独断専行する。車両の遺跡なんてあるわけもないと笑い飛ばす軍人。戦車を見れば「攻撃される」「侵略される」と攻撃する。
見てすぐに思い込みで判断し行動する。その思い込みを「確証バイアス」といいます。思い込みがあると目に見たものを正しく判断できず、思い込みに合った情報だけを選択してしまうというものです。
確証バイアスによって物事を判断するのを、オットー・シャーマーのU理論では第1ステージ、ダウンローディングと呼んでいます。自分の既存知識の中だけで物事を判断し、現実を見ない、自分の中だけの視点で対応すること。それが問題を作り出し、解決できない状況にしてしまうといいます。
イデオンではまずはそのキャラクターデザインで視聴者に思い込みを体験させます。そして登場人物は思い込みで行動し、一番間違った判断と行動をし、偶発的な戦争を起こしてしまいます。最悪のファーストコンタクト。視聴者と作者の、地球人とバッフクランの、最悪のコミュニケーションがここに生まれる。そしてそれは作者の意図したところなのです。
富野監督はガンダムで、地球の裏側の人とも共感できるようになるという人の革新、進化の方向性を示しました。それは目標であって、次に必要なのは現時点と目標点を結ぶ道です。そこでイデオンでは現時点をまず示します。今の私たちがいかに目の前の人すら理解できないのか。正しくコミュニケーションがとれないのか。
そしてここには富野さんに物申す安彦良和はいません。だから彼の作家性がダイレクトに表面に出てきて、それがあまりにも生々しい。まさにガンダム後の、あのタイミングでしか生まれない奇跡の作品 が、伝説巨神イデオンです。
<今日の学び>
私たちの中には確証バイアスがある。
正しいコミュニケーションの第一歩は自分の中のおもいこみに気づくこと。
『伝説巨神イデオン』(c)東急エージェンシー・サンライズ